うもれ木の郷とは

法人名の「うもれ木の郷」の由来

宇生賀地区は、四方を山に囲まれた標高400メートル近い盆地。
この盆地は、新生代に周囲の山々の噴火により、まず堰止湖として形成され、その後、湖成層が堆積してできた地帯。
この湖を取り巻くように伊豆(いず)、三和(さんわ)、上万(じょうまん)、黒川(くろがわ)の四つの集落があり、農事組合法人うもれ木の郷は、この4集落を基盤として設立しています。
この地区は「一目百町歩」といわれ、隣町から山越しに宇生賀へ到着と同時に目の前に、広々とした圃場が広がり、何も遮るものはなく、湖上であったことをうかがわせます。
この水田の中から、神代杉の大きな根(うもれ木)が何本も掘り出されました。幹は奈良の東大寺の建築に供されたと語り継がれています。
この伝承が、法人設立に際して「うもれ木の郷」と名づけた由来です。

うもれ木の郷は、山並みは美しく、川は澄んだ水をほとばせながら流れ、豊かな木々の緑とそこから流れ出た美しい水に恵まれた美しき“山紫水明”の地です。

法人「うもれ木の郷」の設立

うもれ木の郷の誕生は、平成9年2月4日宇生賀地区(伊豆、三和、上万、黒川)の4集落の66戸が構成員でスタート。
しかし、法人設立は、一朝にしてできたわけではありません。
平成3年阿武町役場から、宇生賀地区に国営山口北部農地再編パイロット事業の話がありました。
このパイロット事業の話と同時期に、地区内の76戸の全員参加の「明日の宇生賀を考える会」が発足し、地域の見直しと再生の方向の検討が始りました。
パイロット事業は簡単に全員の同意を得るには至りませんでした。

反対の理由は、
①既に20アール区画の整備がなされている。(今から90年以上前、大正4(1915)年の整備された)
②後継者がいないのでお金をかけてもしかたがない。
③圃場整備の償還金は負担が大きい。など

賛成は、
①軟弱な地盤の現在の水田では、大型機械が入らず、今後の高齢化に対応できない。
②水路、農道、暗渠等が悪く今後の機械化に対応できない。
③地下水位が高く、水管理を一元的に行わないと畑作経営ができない。など

この双方の意見が拮抗し結論が出せないままで時間は経過し、事業参加への意思表示の締め切りが迫るなかで、平成4年8月事業実施までには、様々な課題を解決するとし、一応の地区同意を取り付けました。
将来に向けて、水稲を作りながら隣では野菜ができる農地作りこそが、宇生賀の農業生き残りの道との結論に達しました。
平成7年10月、4年近い時間を費やして全農家の同意が形成されました。

こうして、生産基盤の整備の方向づけができ、平成8年7月基盤を活かした生産とそれを担う人と組織、任意組合の宇生賀農業生産組合が出来き、法人化へ向けての検討に着手しました。

法人化のメリット

① 組合が米のプール計算や生産指導の一括化等、法人と大差ない経営を目指していること。
② 各種補助事業の事業主体となり得ること。
③ 先導的利用集積事業等の円滑な推進が図れること。
④ 税制面、金融面でメリットがあること。
⑤ 任意組合では、経営の継続性の担保がない。また経営責任等の意思決定の明確化が阻害される危険性があること。
  
この決定は、極めて速やかに実行に移され、農事組合法人うもれ木の郷は、平成9年2月24日に設立されました。
このときは66戸の参加にとどまり全員参加ではありませんでした。。
このときの初代組合長が、現在、代表理事を務める田中敏雄さん。

うもれ木の郷経営方式

うもれ木の郷は、現在戸の73組合員で運営されています。経営面積は約84ha。その内訳は水稲が64.4ha、大豆12.2ha、スイカ・ほうれん草6.4ha、その他野菜2haとなっています。
うもれ木の郷方式の特徴は、利用権を設定した農地に対する「小作料水準」の高さです。
うもれ木の郷は、10a当たり1万2,500円を法人から地権者に支払い、その上に従事分量配当として10a当り1万2,500円を確定配当として、農地配当計2万5,000円を組合員に約束しています。
出役に対する配当は、米・大豆はプール計算方式による従事分量配当。
スイカやホウレンソウなどの施設野菜等は、独立採算方式による従事分量配当制を採用しています。
この独立採算方式は、組合員の生産意欲を喚起する手段として展開され、法人の施設でただ働いて、時間給ではなく、働きによる配当に差がつく仕組みです。
「自分の土地、自分の施設として、組合員が営農に取り組んでもらい、その成果は公平に配分するためにこの方式を編み出しました。
「組合員もこのシステムを受け入れ、積極的な営農が展開されている」と田中代表理事は、自信をもって語ります。

空か見た宇生賀
宇生賀地区は町の内陸部の宇生賀盆地に位置し、伊豆、三和、上万、黒川の4集落からなり、農家戸数49戸(地権者76戸)で農家人口165人、耕地面積122ha、水田面積104haで水稲、大豆、スイカ、ハクサイ、ナシ等を栽培する農業地帯です。